製品 Lemma API証明の発行・検証の基盤Trust402エージェントに任せ、取引するSeal鍵を渡さない、エージェント時代のサインイン
ユースケース 製造・基幹インフラ検査記録アシュアランス金融・FinTech取引先レコード検証自治体・公共証明書レス手続き医療・ヘルスケア有資格者アシュアランス調達・サプライチェーン仕入先資格モニタリングメディア・コンテンツコンテンツ真正性サービス・小売グループ横断アイデンティティAI導入(業種横断)AI実行ガバナンス開発者・エージェント運用エージェント権限統制 ▸ 業界別ソリューション索引を見る
料金
リソース Critical BriefAI×信頼の最前線ブログ考え方と実装の記録ドキュメントAPI と仕様書検証センター検証・発行の実数運営会社FRAME00, Inc.お問い合わせ導入・取材のご相談ニュースレター更新のお知らせ用語集言葉の定義FAQよくある質問
始める ↗ EN

Hugging Face の学習データ 7.6PB に、生きた認証情報が 22 万件超あった

検出も通知も届いていたのに、鍵は失効されなかった(Truffle Security 調査)

事案日
2026-06-01
公開日
2026-08-04
発行
Lemma Critical Team
関連 Pack
Pack A · Incident Response

TL;DR

2026 年 6 月 1 日、Truffle Security は Hugging Face の全公開データセット——7.6 ペタバイト、1 億 8,690 万ファイル——を走査し、いまも有効な認証情報を 221,303 件、6,003 のデータセットから検出したと公表した。うち 1 件は約 393 ギガバイトの個人情報(同社推定で世界人口の約 3.7%)に到達できた。プラットフォームは検出も通知もしていた。効かなかったのは、通知の後に鍵を失効させ、そして取り込む前にデータの来歴を確かめる層である。

何が起きたか

  • Truffle Security が Hugging Face の公開データセットを端から端まで走査した。Parquet・Arrow・JSONL・アーカイブ・バイナリを走査可能なテキストへ展開し、TruffleHog を検証モードで実行した。対象は約 81.5 万リポジトリ、1 億 8,690 万ファイル、7.6PB におよぶ。同社の従来最大の走査(約 400TB)の約 19 倍にあたる。
  • 検出は 221,303 件・6,003 データセット。内訳にはコードを他者の環境へ送り込める鍵が多数含まれる(GitHub PAT 349 件——full repo write 223/CI 書換 130/admin:org 112/パッケージ公開 110、Docker Hub 318、Hugging Face トークン 787 件——うち write 237・org-admin 70)。なお npm と PyPI は個別に確認され、生きた鍵はゼロだった。
  • クラウド乗っ取り級も出た。GCP サービスアカウント鍵 8,557 件(3,811 プロジェクト)、稼働中のデータベースログイン 8,594 件、AI プロバイダ鍵 11,496 件(1,210 データセット、OpenAI・Azure OpenAI・Anthropic・Gemini・Groq 等)。漏洩鍵で盗まれ得る推論は年約 92 万ドルが下限と見積もられている。

この露出は次の連鎖で永続化する。

  1. 認証情報がどこか(GitHub・Web・チャットログ)で漏れる。
  2. それが The Stack や Common Crawl などの上流コーパスに吸い上げられる。
  3. コーパスの派生・再アップロードのたびに同じ鍵が再公開される。生きた鍵の 44% が複数データセットに現れ、19,380 件は 10 以上のデータセットに現れる。
  4. 学習に取り込まれ、モデルの重みに畳み込まれる。

時系列 — 公表と対応

  • 2026-06-01:Truffle Security(Dylan Ayrey ほか同社リサーチチーム)が調査結果を公表。
  • 公表前:最も影響の大きい発見(約 393GB の個人情報に至る露出を含む)を、当事者とプロバイダへ先行通知し、重大なものの受領確認を待って公表を保留。

本調査は研究であり、広範な悪用の報告ではない。個人・企業・データセット名は非開示。生きた鍵の検証は各プロバイダに対して行われ、参照する数値は検証済みである。到達範囲の確認はメタデータのみで、データの読み取り・複製・改変は行われていない。走査対象 約 81.5 万リポジトリのうち完走したのは約 67 万で、数値はその範囲での下限にあたる。

公表後の対応と業界の動きは次のとおり。

  • Hugging Face は以前から公開プッシュを TruffleHog で走査し、検出時に作成者へ通知する。Enterprise 組織では、公開リポジトリやバケットへ押し込まれた HF トークンをその場で自動失効させる。
  • 同社 CTO の Julien Chaumond は TruffleHog へ、ストレージバケット走査のネイティブ対応コードを寄贈した。Truffle は寄贈後の走査で新たな大量の鍵を見つけたとし、続報を予告している。
  • ただし本調査が測ったのは、その通知の先にある落差——「検出され、通知されたのに、失効されなかった」鍵が生きたまま残る割合——である。追跡できた Hugging Face トークンのうち、約 700 件は他人のコーパスから紛れ込んだもので、所有者自身の流出は 63 件だった。

なぜ止まらなかったか

この事案の失敗は、検出が無かったことでも、通知が届かなかったことでもない。通知の後に鍵を失効させ、そして取り込みの前にデータの来歴を独立に確かめる層が無かったことにある。

検出も通知も効いていた。効かなかったのは、その先——通知を受け取った人間が実際に鍵を失効させるかどうか、そしてそもそも来歴を欠くデータが取り込まれるのを止められるかどうか——である。Truffle 自身がこの落差を言葉にしている。通知は、誰かが行動して初めて意味を持つ。そして行動の割合は 100% に遠く及ばない。

「検出され、通知され、しかし失効されない」。これほど多くの鍵がいまも生きている理由の大半はここにある。

学習データは、最も取り消しの効かない漏洩である。git の履歴は force-push で消せる。学習セットに undo は無い。ChatGPT の会話に一度貼られた Infura の鍵が WildChat のチャットログデータセットに捕捉され、そこから 1,131 のデータセット・10,162 のファイル位置へ複製された例では、元を取り消しても残り 1,130 の複製には何の効果もない。漏洩は自走する。

これは Brief 079(Common Crawl の生きた認証情報)が示した構造の Hugging Face データセット版であり、規模で上回る。公開は取り込みの同意ではない——Brief 036(学習データへの個人情報混入)と同じ論点が、ここでは複製が自走することで一層深くなる。

証明があれば、何が変わるか

事前証明(proof-as-auth)は、データが学習パイプラインへ取り込まれる一つひとつの行動の前に、その来歴を独立に検証する層を経路に一段挟む。データセットの名前やダウンロード数を出所の代用にせず、「このデータはどこ由来で、公開・利用の条件は何か」を、取り込みが成立する前に確かめる。

Lemma がこの primitive に対して提示する設計は次の通りである。

  • 取り込み前の来歴証明:コーパスを学習・再公開する前に、各データの出所と利用条件の証明を要求する。証明が無いものは取り込まない。
  • 発行者・出所の独立検証:データセットの名前やダウンロード数ではなく、出所を独立に確かめる。
  • 汚染の下流遮断:来歴を欠く、あるいは秘密を含むデータが派生へ複製される前に、経路上で弾く。複製が始まってからでは、取り消しは元の 1 件にしか効かない。
  • 認証情報のライフサイクル:漏れた鍵は隠すのでなく失効を前提に扱う。失効の事実そのものにも証明を結びつけ、失効済みであることを示せるようにする。

Lemma は秘密を走査する製品ではなく、漏洩を検知するものでもない。射程は、データが取り込まれる前に出所と利用条件を独立検証し、証明を欠くデータの取り込みと再公開を差し止め可能にすることにある。秘密のスキャンと通知(TruffleHog による走査、プラットフォームの自動失効、鍵のローテーション)と、事前証明(取り込みの前に来歴を確かめる証跡)は、代替ではなく補完の関係にある。前者は既に漏れた鍵を見つけ、後者は「検出され、通知されたのに残り続ける」——検出が構造的に閉じられない取り込みと複製の一点を閉じる。補完の位置づけは 「AI 時代のサイバー防衛に残された、最後の層」(Lemma、2026-05)、設計の詳細は 「Proof-as-Auth: 鍵を一度も送らずにサインインする」、適用範囲は Pillar 01 — 来歴証明 を参照。

Sources

「AI 時代のサイバー防衛に残された、最後の層」Pillar 01 — 来歴証明Brief 079(Common Crawl の生きた認証情報)Brief 036(学習データへの個人情報混入)

本資料は公開情報の構造化分析であり、特定組織への監査・診断・推奨ではありません。

この Brief を引用する

Lemma Critical Team. (2026).
"Hugging Face の学習データ 7.6PB に、生きた認証情報が 22 万件超あった — 検出も通知も届いていたのに、鍵は失効されなかった(Truffle Security 調査)".
Lemma Critical Brief No.122. Lemma / FRAME00, Inc.
https://lemma.frame00.com/ja/critical/briefs/122-truffle-huggingface-datasets-live-secrets/
Lemma

確かめられないものを、
業務に入れない。

Lemma は、データや AI の実行に暗号技術で証明を付け、受け取った側が発行者に問い合わせることなく真正性を確認できるようにします。検出はそのままに、その前段へ一層を足す構成です。