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No. 119 Critical Brief · 来歴証明

警察庁:未成年の性的ディープフェイクの把握件数が、半年で昨年 1 年間を上回った(2026 年上半期の統計)

123件
未成年の性的ディープフェイク画像・動画をめぐり、全国の警察が 2026 年 1〜6 月に把握した事案。昨年同期は 60 件(警察庁)
114件
昨年 1 年間に把握した事案。半年で上回った(警察庁)
83件
加害者が被害者の同級生や同じ学校の生徒だった事案。7 割近くを占める(警察庁)
国・地域日本
事案日2026-08-03
公開2026-08-03
発行Lemma Critical Team
目次
  1. 01要点
  2. 02通った操作
  3. 03実行前の照合
  4. 04Lemma でできること
  5. 05事実と時系列
  6. 06Sources

要点

警察庁の公表によれば、被害者の 9 割は中高生で、SNS などで知り合った人物による事案は 7 件にとどまった。同じ日には、実在の女性の写真を生成 AI で加工した性的な画像を SNS 上の掲示板に投稿したとして、警視庁が会社員を逮捕し、作成を依頼した高校生も書類送検する方針だと報じられた。統計の整備と捜査は、公開された後の被害を把握している。実在の人物の写真が手に入ることは、その人を素材に生成してよい認可ではなく、生成と公開の前に本人の認可を照合しなければ、受け手は画像から無断かどうかを見分けられない。

図表 1「検知」と「実行の前の照合」の違い

実行の前の照合=実在の人物の写真を素材にする生成と公開の前に、本人の認可を照合し、記録に残すこと。検知=公開された後に、被害を把握すること。今回は、警察庁の統計の整備と、警察の捜査がそれに当たる。

実行の前の照合 · 公表からは分からない生成と公開の前に、写っている本人の認可を照合する
警察庁が公表したこと把握した事案が、半年で
昨年 1 年間を上回った
検知 · 統計の整備と捜査が働いた事案を把握し、作成者と依頼者の立件へ進む
素材
実在の人物の写真が、ネットや SNS 上にある
生成
生成 AI のサービスで、性的な画像に加工される
投稿
掲示板などで、不特定多数が見られる状態に置かれる
08-03
警察庁が上半期の統計を公表する

通った操作

通った操作
実在の人物の写真を素材にした、性的な画像・動画の生成と、その投稿・共有。警察庁の統計は、こうした画像・動画をめぐって全国の警察が把握した事案の件数と、被害者・加害者の内訳を示す。同じ日に報じられた警視庁の事件では、生成 AI で加工した画像が SNS 上の掲示板に投稿され、不特定多数が見られる状態に置かれた。
受け付けた側に届くもの
一般に、生成のサービスには素材の写真と生成の指示が届き、写っている人が利用を認めたかは届かない。投稿の先にも画像だけが届き、受け手は、実在の人物の写真から無断で作られたものかを、画像そのものからは判別できない。
加害者との関係
加害者は、被害者の同級生や同じ学校の生徒が 7 割近くを占めた(警察庁)。素材の写真は身近にあり、投稿の先は日常的に使われる場である。
公表されていないこと
統計の事案ごとの、生成の手段や投稿・共有の場の内訳。警視庁の事件で素材の写真がどう入手されたかは、捜査中とされる。

実行前の照合

経路を問わず区別できる条件は、実在の人物の写真を素材にする生成と、その生成物の公開の前に、写っている本人が利用を認めたかを、素材が手に入るかどうかとは別に照合することである。

この事案の核心
実在の人物の写真が手に入ることは、その人を素材に生成してよい認可ではなく、生成と公開の前に本人の認可を照合しなければ、受け手は画像から無断かどうかを見分けられない。
誰が承認を出すか
写っている本人。写真がインターネットや SNS 上にあることは、生成への利用を認めたことの代わりにならない。
どこで照合するか
生成の手前と、投稿・共有の手前。本人の認可が照合できない生成と公開は、成立の前に保留する。
何が残るか
生成物が、どの素材から、どの認可に基づいて作られたかの記録。本人の身元や連絡先を渡さずに、認可があることだけを示せる形にし、認可の確認のために被害を受けうる人の情報を集めない。

警察庁の統計と警視庁の捜査は、被害の内訳と加害者との関係、作成を依頼した人まで明らかにしたが、それは生成と公開が済んだ後に把握したものだった。同じように、肖像の利用の認可や来歴が生成・公開の前に照合されなかった事案に、JAPRO の肖像・声の実態調査、YouTube の偽の著名人、Grok のディープフェイクの同意 がある。生成物に埋めた来歴の印が外せた点は、SynthID の透かしの除去 と重なる。

Lemma でできること

Lemma は、実行前の照合を、実在の人物の写真を素材にする生成と、その投稿・共有の手前に組み込む。画像が偽物かを判定するのでも、削除の申請を代わりに出すのでもなく、その生成と公開に、写っている本人の認可があるかを、成立の前に照合する。

注意したい業界・業務

業界AI
写真や動画から、実在の人物のように写る画像・動画を生成するサービス。
業務情報の開示・提供
利用者が作った画像・動画の投稿・共有を受け付け、不特定多数に見せる場。

いまの対策と Lemma の違い

今回の型は、1 列目(実在の人物の写真を素材にした生成)と 2 列目(生成物の投稿・公開)である。

対策実在の人物の写真を素材にした生成生成物の投稿・公開
被害・加害の防止の広報啓発資料(警察庁)一部一部
Lemma(実行の前の照合)効く一部

広報啓発資料は、加害者の多くが同じ学校の生徒であるという統計の特徴に向けたもので、生成や投稿の操作そのものには組み込まれない。Lemma は、生成の前に、写っている本人の認可を照合する。投稿の前の照合は、認可の記録が結び付いていない画像を保留できるが、記録の無い画像が実在の人物から作られたかどうかは判定しない。公開された画像を見つけたり、消したりするものでもない。

注:Lemma の照合が働くのは、生成のサービスや投稿の場に照合を組み込み、本人の認可が、生成を求める人とは別に発行・管理されている場合に限る。照合を組み込んでいないサービスで作られ、照合の無い場に投稿された画像には働かない。表は何を照合しているかの比較で、今回の事案で止まったかどうかを示すものではない。Lemma は、侵入を検出・防止するものではない。

点検点検チェックリスト

実在の人物の写真を素材にする生成と公開について、組織で確認する 3 項目

  • 生成物に、どの素材から、どの認可で作られたかの記録を結び付けているか。
  • 本人の認可が照合できない生成物の公開を、公開の前に保留できるか。
  • 申告を受けたとき、当たる生成物の素材と認可の記録を辿れるか。

事実と時系列

公表
警察庁が 2026-08-03 に公表した。未成年の性的ディープフェイク画像・動画をめぐり、全国の警察が 2026 年 1〜6 月に把握した事案は 123 件。昨年同期の 60 件から倍増し、昨年 1 年間の 114 件も上回った。
被害者
中学生が最多の 79 件、高校生 38 件、小学生 3 件、不明 3 件。9 割が中高生である(警察庁)。
加害者
被害者の同級生や同じ学校の生徒が 83 件で 7 割近くを占め、SNS などで知り合った人物は 7 件だった(警察庁)。
同じ日に報じられた事件
警視庁が、実在の女性の写真を生成 AI で加工して性的な画像を作り、SNS 上の掲示板に投稿して不特定多数が見られる状態に置いたとして、会社員(32)を児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)と名誉毀損の疑いで逮捕していた。容疑者は、加工した画像は約 300 枚、うち 100〜200 枚を投稿し、その半数は男子高校生から依頼されたものだと供述している、と報じられた。
素材と法の適用
素材はインターネットや SNS 上にあった実在の写真で、一部は第三者が違法にアップロードしていたものから取得されたとされる。被害者の 1 人については中学生のときの写真が使われ、児童ポルノ禁止法の適用はこの点による。入手経路は捜査中とされる。
生成の手段
容疑者は、生成 AI のサイトに月額 3,000 円程度で会員登録していた、と報じられた。
依頼
女性の写真を SNS に投稿して作成を依頼したとされる男子高校生(17)について、警視庁は同じ両容疑で書類送検する方針である。

用語メモ
性的ディープフェイク — 生成 AI などで、実在の人物の写真や動画を性的な画像・動画に加工したもの。
公然陳列 — 不特定多数の人が見られる状態に置くこと。児童ポルノ禁止法で処罰の対象になる。
書類送検 — 警察が、捜査の書類を検察に送ること。有罪が決まったことを意味しない。

時系列

  • 警察庁が、18 歳未満の性的ディープフェイクの被害について初めて統計を公表する(2025 年 1〜9 月の相談 79 件)。加害者の半数超が同じ学校の関係者であることを示し、被害・加害の防止の広報啓発資料を公開する。
  • 警視庁が、この日までに会社員(32)を逮捕する(報道は 8 月 3 日)。
  • 警察庁が、2026 年 1〜6 月の把握件数 123 件を公表する。

本 Brief の事実は、警察庁の公表と、それを報じた通信社・全国紙の報道に基づく。件数と内訳は警察庁の公表による。逮捕された者は本 Brief の作成の時点で被疑者であり、有罪が確定した者ではない。個人の氏名、居住地、被害を受けた人の特定につながる細部と、画像の作り方は記載しない。本 Brief は、特定の人や組織を責めるものではない。公表されていないことは、対策が無かったことを意味しない。

公表後の対応

  • 法の適用: 日本には性的ディープフェイクそのものを直接処罰する単独の法律が無く、警視庁の事件でも、児童ポルノ禁止法(公然陳列)と名誉毀損という既存の法の組み合わせで立件されている。
  • 依頼した人への責任: 作成を依頼した高校生も書類送検の方針とされ、生成を実行した人だけでなく、依頼した人にも責任を問う扱いが示された。いずれも、起きた後の責任の追及である。
  • 広報啓発: 警察庁は 2025 年 12 月から、被害と加害の両方に向けた広報啓発資料を公開している。加害者の多くが同じ学校の生徒であるという統計の特徴に向けた取り組みである。

Sources

  1. 一次・広報啓発資料警察庁「児童の性的ディープフェイク被害・加害防止のための広報啓発資料」(2025-12-18)— https://www.npa.go.jp/newlyarrived/2025/20251218001.html
報道・解析 6 件
  1. 警察庁公表共同通信「AI性的画像、上半期は123件 警察庁、昨年同期から倍増」(2026-08-03)— https://news.yahoo.co.jp/articles/3391e8359190c7cb5db0bc47b157f0e4fea06679
  2. 同・続報共同通信「上半期のAI性的画像、把握123件」(2026-08-03)— https://news.yahoo.co.jp/articles/20e637db28766a6adfc159421c098f63de852e14
  3. 独立報道日本経済新聞「『ディープフェイク』わいせつ画像、AIで作成疑い 会社員を逮捕」(2026-08-03)— https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD030GY0T00C26A8000000/
  4. JNN・独立報道TBS NEWS DIG「【速報】生成AIで実在する女子陸上選手の写真を加工…「性的ディープフェイク」画像をSNSに投稿か 児童ポルノ禁止法違反の疑いなどで会社員の男を逮捕 警視庁」(2026-08-03)— https://news.yahoo.co.jp/articles/43ce4783439f6729e44dceb82e72d6857782a35f
  5. 独立報道朝日新聞「中学生の時の体操服姿をAIで裸に加工、SNS投稿か 会社員逮捕」(2026-08-03)— https://news.yahoo.co.jp/articles/e842e8e563ba2c9264178daf0282c869a2dfd83a
  6. 2025 年統計の初公表時事通信「性的偽画像の被害相談、18歳未満79件 5割超が学校内 生成AI普及で低年齢化―警察庁が初公表」(2025-12-18)— https://www.jiji.com/jc/article?k=2025121800120&g=soc

参照: 「AI 時代のサイバー防衛に残された、最後の層」

ほかでも起きている同じ手口「情報の開示・提供」の事例 14 件を一覧で見る

この Brief は、公表された事実から、同じ立場の組織が点検できることを整理したものです。個別の被害や手続きの案内ではありません。

本資料は公開情報の構造化分析であり、特定組織への監査・診断・推奨ではありません。

この Brief を引用する

Lemma Critical Team. (2026).
"警察庁:未成年の性的ディープフェイクの把握件数が、半年で昨年 1 年間を上回った(2026 年上半期の統計)".
Lemma Critical Brief No.119. Lemma / FRAME00, Inc.
https://lemma.frame00.com/ja/critical/briefs/119-japan-sexual-deepfake-npa-h1-2026/
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