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Solutions 2026.08.21 11分で読める

帳簿を開示せずに突き合わせる。ステーブルコイン決済の月末をスムーズに

円建てステーブルコインでの支払いは、送金そのものはすでに数分で終わります。月に数百件、数千件の取引がある事業者では、オンチェーンのイベントを走査しただけでは足りません。総額は合わないのに、どの取引がずれているか分からない——その内訳は送金に乗らないからです。Lemma の照合は、互いのデータを開示せずに一致だけを確かめます。オンチェーンの決済記録と、支払う側の会計と、受け取る側の会計。この3つが同じ支払いを指しているかを、中身を見せずに突き合わせます。

TL;DR

円建てステーブルコインでの支払いが、協力会社への委託費や海外拠点への送金といった実務で動き始めました。送金そのものはすでに数分で完了します。オンチェーンの記録に残るのは、いくら動いたかというところまでで、その送金がどの請求書の、どの号数に対応するかという内訳は乗りません。月に数百件、数千件の取引がある事業者では、オンチェーンのイベントを端から走査しても、総額が合わないときにどの取引がずれているかは分かりません。この内訳を伝える手段が送金とは別経路になるぶん、次に短くできるのは月末の締めにかかる時間です。担当者が時間を使っているのは突合の作業そのものより、相手からの返事を待つ時間だからです。

Lemma の照合は、互いのデータを開示せずに一致だけを確かめます。オンチェーンの決済記録と、支払う側の会計と、受け取る側の会計。この3つが同じ支払いを指しているかを、中身を見せ合わずに突き合わせられるので、一致した件はその場で片づき、担当者が向き合うのはずれた件だけになります。

月末の締めで、いちばん長いのは待っている時間

円建てステーブルコインは、資金移動業型・信託型・外国発行という3つの類型で発行体がそろい、協力会社への委託費や海外拠点への送金といった実務での支払いに使われ始めています。送金そのものは数分で完了しますが、導入を検討するときに気になるのは、月末の締めまで同じように短くなるのか、という点です。

銀行振込であれば、自社の買掛と銀行明細を突き合わせるだけで済むことがほとんどです。ステーブルコインで払う場合は、ここに相手の売掛という3つ目の照合先が加わることになります(理由は次の章で説明します)。月に数百件、数千件の取引がある事業者では、オンチェーンのイベントを走査しただけでは足りません。総額は合わないのに、どの取引が間違えているか分からない——この状態が、締めを数日押し下げます。ずれが見つかると、相手に問い合わせて、相手が自社の帳簿を調べて、返答が来るのを待つことになり、ここで数日かかります。

仮に月1,000件のうち照会が30件で、1件あたりの照会と確認に18分かかるとすると、作業そのものは9時間です。ただ、締めの日程を実際に押すのはこの9時間ではなく、1件ごとに発生する、相手の返答を待つ数日のほうです。ステーブルコインで払えば送金自体は数分に縮みますが、この待ち時間はそのまま残ります。

オンチェーンの決済と、両社の会計が同じ支払いを指していることを、自動で確かめる

銀行送金とステーブルコイン決済の違い

銀行送金では、銀行が両側の明細に同じ取引を記録します。銀行明細が共通の参照源なので、「同じ支払いを指しているかどうか」は銀行が担保してくれます。

ステーブルコインで支払うと、オンチェーンにトランザクションが残ります。着金は数分で確認でき、銀行より速く、経路も透明です。

ただし、オンチェーンの記録は「AからBにXトークン移動した」という事実だけを示します。これがどの請求書に対する支払いかまでは、記録に含まれません。銀行が仲介していた「これは同じ取引です」という確認が、ステーブルコインにはないのです。

委託先が数百社規模になると、同じ取引先への支払いでも複数請求書分が合算されることがあり、相手のアドレスをあらかじめ知っていても、この内訳までは分かりません。アドレスで分かるのは「誰から届いたか」までです。

3つの記録が同じ支払いを指しているかを確かめる

支払いが起きると、3つの場所に記録が残ります。

  • オンチェーンの決済記録 — AからBにいくら移動したか
  • 支払う側の会計 — 請求書番号・金額・支払日
  • 受け取る側の会計 — 入金額・計上日

この3つが同じ支払いを指していることを、Lemma は自動で確かめます。

左に決済記録と支払う側の会計、中央に照合レジストリ、右に受け取る側の会計。支払い時に記録し、取引txや見積番号などで照合する。中身は非公開で登録もしない。一致すれば自動で完了、不一致なら項目を特定する
図1 オンチェーンの決済と、両社の会計が同じ支払いを指していることを自動で確かめる

支払先・金額・請求番号・支払日は、支払いが起きた時点でそれぞれの側が記録します。中身そのものは相手にもレジストリにも渡しません。照合は、取引の tx や見積番号といった、両者がすでに持っている項目で同じ支払いを突き合わせます。取引先の帳簿の中身には触れないまま、合っているかどうかだけが分かります。

Lemma が確かめているのは「送金があったか」(それはチェーンがすでに証明済み)ではなく、「両社の帳簿が同じ支払いを指しているか」です。後者はオフチェーンの情報なので、開示せずに暗号学的に束縛して照合します。単純な値の比較ではなく、各側の記録がその支払いにバインドされていることを検証しています。

社内で話を始めるなら相手は情報システム部門になりますし、いまの会計システムのどこに1段足すかという判断も、彼らが持っています。

一致すればその場で完了

一致した支払いは、担当者が確認する必要はありません。

ずれがあれば、どの項目がずれているかまで分かります。金額は一致していて請求番号だけが違う——見るべきは請求番号だけです。取引先への問い合わせは1回で済みます。

支払いが確定してから、消込が落ちるまで

まとめて後から作るのではなく、出来事が起きるたびに1件ずつ登録していきます。

1. 支払いが確定する。 支払先、金額、請求番号。承認が下りた時点の内容を、中身を渡さずに記録します。既存の承認フローの最後に1段足すだけで済みます。

2. 送金する。 オンチェーンのトランザクションを 1 と紐づけます。事業者間の移転にはトラベルルールにもとづく通知も発生しますが、これも同じ経路に載せられます。

3. 相手が計上する。 受け取った側が自社の会計に入れた時点で、同じ項目を記録します。

4. 照合する。 取引の tx や見積番号などで 1 と 3 を突き合わせて、一致すれば消込は完了です。

1,000件のうち30件がずれているのであれば、担当者が見るのはその30件だけになり、残りの970件は誰も触らないまま落ちていきます。登録は出来事ごとに一度で済みますが、照合の回数に制限はないので、あとから何度でも確かめられます。

取引先から「入金額が明細と合わない」と連絡が来たときも、こちらが控えを探して再送する代わりに、相手が手元の記録をその場で照合できます。取引先が2,000社あっても、手順は1社のときと変わりません。

監査の場面でも、証跡を集めて時系列に並べる工程は、経路が残っていれば軽くなります。照合が通ったことをもって原本確認がまるごと不要になる、というところまでは言い切れず、監査手続にどう組み込むかは事前にすり合わせておく領域です。

一致が確かめるのは、正しさの手前まで

照合が確かめられるのは、次の3点です。

  • 両者の記録が同じ内容を指しているかどうか(中身を開示せずに)
  • その記録がどの記録に紐づいているか(支払確定 → 決済 → 計上)
  • 記録の内容が、登録された時点から変わっていないかどうか

金額が契約どおりだったか、検収の判断が適切だったかは、この外にあります。そこは引き続き人が担う領域で、両者が同じ誤りを記録していれば、照合そのものは一致として通ります。

範囲は絞られていますが、絞られている分だけ機械に任せやすく、「ここまでは機械で確かめられます」「ここからは判断の領分です」と切り分けて説明できます。報告や監査の場でも、この切り分けが伝わるほうが、実際以上に強く見せるより通りやすいはずです。

制度が求めているのは記録の作成と保存までですが、そこに照合を重ねることで、待ち時間を減らす設計にできます。

発行体の類型をまたいでも、手順は変わらない

いま円建てステーブルコインは、資金移動業型・信託型・外国発行という3つの類型で発行体がそろいました。AZ-COM丸和ホールディングスは2026年7月、協力会社と個人のトラック運転手を含む約2,300社への委託費の支払いに JPYC を導入すると発表していて、大企業が日常的な企業間決済に円建ての規制対象デジタル決済手段を使う初の事例と位置づけられています。三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行が協議している共同発行の信託型は2026年度中の実取引開始を目指しており、想定される用途のひとつとして、日本拠点と海外拠点のあいだの越境決済が挙がっています。

矢野経済研究所は市場残高が2030年度に14.7兆円規模へ伸びると見ています。B2B・B2C の実利用は2030年度時点でも全体の1割未満とされていて、いま動きはじめているのは支払い業務の一部です。

ただ、企業が複数の類型にまたがって取引する場面は、これから普通になっていきます。資金移動業型で出した支払いと、信託型で受けた入金と、外国発行を経由した決済。発行体も仲介する事業者も違いますが、照合の手順のほうは変わりません。 類型ごとに突合の手順を作り直さずに済むという点が、複数が並走している局面では実務上の差になるはずです。

同じ構図は規制産業では珍しくなくて、製造の現場でも出荷が書類の往復で止まります。検査記録はあるのに、受け取った側で確かめる手段がないので、原本の提出と照会が繰り返される。扱っているものは違いますが、詰まっている場所は同じです。

突き合わせる相手が、機械になったとき

ここまでは、人が確認する前提で書いてきました。

支払いの判断や実行をエージェントが担う場面は、これから増えていきます。国内でも、Pacific Meta が2026年4月から円建てステーブルコインを使った B2B 決済と AI エージェント決済の導入支援を始めました。そうなると突き合わせる側も機械になるので、帳簿を人が読んで納得するという手順に代わって、計算だけで判定できる形が必要になります。

先の話ではありますが、記録の形は早く決めておくほど、あとから安く済みます。運用が回りはじめてから様式を変えるほうが、たいてい高くつくからです。

Lemma が扱うのは記録の内容と経路です。どのチェーンで発行されたか、どの類型の発行体か、どの事業者が仲介したかに関わらず、同じ形で照合できるように設計しています。そのエージェントがその支払いを出してよかったのか、という権限の側は Trust402 が扱います。照合と、実行の権限。2つは別の証明ですが、同じ API の上に載ります。

次に短くなるのは、突合の待ち時間

送金にかかる時間はすでに短くなったので、次に縮むとすれば突合の待ち時間のほうになるはずです。

やることは1つ足りるだけです。すでに持っている記録どうしを、見せ合わずに照合できる形にしておく。それだけで、相手の返事を待っていた時間から先に縮んでいきます。

自社の状況を測るなら、3つ数えてみるところからです。月にどれだけの支払明細を社外に出しているか。そのうち何件で照会が発生するか。1件あたり、確認に何往復かかっているか。

証明の発行は一度きり。検証は無料で、キーもアカウントも要らず、何度でも実行できます。

決済に使うレートそのものに証明を重ねる形は、決済レートに、証明を付けるで扱っています。金融・FinTech での当てどころは金融・FinTech のユースケースに、公共インフラでの実装は MizuDAkO の事例にまとめています。

Resources

  • AZ-COM丸和ホールディングス、約2,300社への委託費支払いに JPYC 導入(2026年7月) — 財経新聞
  • 3メガバンク共同・信託型ステーブルコイン、2026年度中に実取引 — 日本経済新聞Impress Watch
  • JPYSC(SBI新生信託銀行・2026年6月24日提供開始) — SBIホールディングス
  • ステーブルコイン市場に関する調査(2026年)— 矢野経済研究所
  • Pacific Meta、ステーブルコイン決済と AI エージェント決済の導入・開発支援を開始(2026年4月) — Pacific Meta
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